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3-15 背徳の夜、決意

***15*** 

有芯は変わらず朝子を探しつづけていた。しかし彼と智紀が朝子を見つけられないばかりか、キミカからの情報によれば篤が依頼した探偵も、未だ朝子の消息をつかめていない。時が経つにつれ、最悪の結果が頭をよぎるようになり、時折有芯は悪夢にうなされるようになった。

その日も有芯は悪夢を見、自らの叫び声に驚いて目を覚ました。

「夢…………だったか」

呆然と呟くと、有芯は握り締めていた布団を離し、上体を起こすと鳥肌が立った腕を擦った。何度か擦ると、彼は薄暗い中で目を凝らし、自らの手を見つめてみた。

この手で―――俺は朝子を抱いた。何度も、何度も……。朝子の身体は暖かくて、柔らかくて、その声はいつも優しい。

でも、夢で見た朝子は青白く冷たくて、硬くなってもう俺に優しい言葉をかけることすらできなくなっていた……。

有芯は両手で頭を抱えると、後ろ髪を握り締め自分に言い聞かせた。バカなことを考えるのはよせ。朝子は生きている……考えるんだ、朝子の行きそうな場所を。人の事ばっかり考えてる、あのお人よし女の思いつきそうなことを……!!

そうして朝子のことを考えているうちに、彼はいつの間にか、九州での夜を思い返していた。



あの日―――――俺は最後に、避妊もしないで朝子を抱いた。

0時のアラームの後、俺の上で綺麗な顔をして眠る朝子をベッドに下ろし、俺は朝子を犯しながら目に涙を滲ませた。

何度となくお前を泣かせた。

なのにまた俺はお前を傷つけている。

泣かせたくないのに、傷つけたくないはずなのに、今日だけと、俺は自分から言った筈だったのに―――なのに俺はまだ、お前を抱いている。

よほど疲れていたのか目を覚ます気配が全くない朝子を、俺は激しく愛撫しながら抱いた。起きろ……朝子、起きて俺を止めろ……何するの?!って言って怒って、やめて、って言って泣いて、俺を失望させてくれよ―――。

でないと……俺、このまま―――――。

「あ……っ」

声を聞き、俺は朝子の顔を見たが、彼女はやはりまだ眠っているようだった。俺は苦笑して呟いた。「罪な女……」

俺は自分の目に滲んだ涙を拭き、朝子の中で激しく動きながら願った。お願いだ、頼むから起きてくれ。起きて俺を拒絶してくれ………!

俺は更に激しく朝子に腰を打ちつけながら、その頬に触れた。朝子は幸せそうな顔で眠っていて、身体の中は暖かく濡れている。

「ひどい……やつ……俺が……一体、どんな……思いで」

お願いだ朝子、俺を……………………俺を拒絶しないで――――――――。

俺は果てる寸前まで身体を動かし、朝子から自身を引き抜こうとした。その時朝子の手が目の見えていない赤ん坊のように空を彷徨い、俺の腕をそっと握った。

そして朝子は目を瞑ったまま、驚いている俺の目前で安堵したように微笑むと言ったのだ。

「愛してる……ゆうし……ん」



そのまま、俺は朝子に覆い被さって、朝子の身体の中に―――――。

有芯は自らの不甲斐なさを思い頭を抱えた。きっとあの時…………。

彼はホテルで朝子と一緒に朝を迎えた時のことも思い出した。



“そんなにがっつかないで。私―――どこにもいかないから”

“有芯!! 私―――”



そしてそう叫んだ彼女の真摯な表情がよみがえり、彼は確信した。

間違いない。朝子はあの時俺に全部話すつもりだったんだ。ちゃんと俺を頼ろうとしてくれたのに……なのに俺は……!

情けねぇ……!! あいつのためと思ってしたことが、かえってあいつを追い詰めていたなんて……!!

有芯は髪をかきむしり思った。

ごめんな……朝子。散々辛い思いをさせて。

待っていてくれ。今度こそお前を幸せにする。そのために、お前が安心して身を委ねられるような男に、きっとなってみせる……。

彼は決意を新たにすると、布団に潜り込み目を閉じた。




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